星コラム「宇宙の成分のダークマターとはどんなもの?」

ブラックホール




 

 

宇宙は何もないようで、何もないわけではありません。

気にする事も少ないかと思いますが、気になりだすと、モヤモヤします。

それを解消してみましょう。

 

実は私たちは、宇宙の95%を未だ知らないのです。

 

宇宙の成分

 

宇宙は何からできているかご存知ですか?

宇宙に存在する質量やエネルギーのうち、普通の物質(原子からなる物質など)は

わずか5%にすぎないという観測結果が出ています。残りの95%は正体不明の

「ダークマター」が23%、「ダークエネルギー」が72%を占めています。

 

今回は「ダークマター」について考えてみます。

「得体の知れない物」と言われている、「ダークマター」はどうやって気が付いた

のでしょう。

 

銀河団の質量

 

1933年、スイスの天文学者フリッツ・ツビッキー(1898~1974)は、地球から

約3.2億光年離れたところにある「かみのけ座銀河団」を観測しました。

 

かみのけ座銀河団は、3000個以上もの銀河が、直径約2000万光年ほどの領域に

集まった銀河の集団です。ツビッキーは、この銀河団全体の質量を測ってみようと

しました。

 

星雲・星団を見てみよう「Mel.111-ベレニケの髪の毛」
「Mel.111」について紹介しました。かみのけ座にある散開星団で、「ベレニケの髪の毛」とも言われています。肉眼では、ぼんやり見えます。「かみのけ座」自身はあまり目立つ星のない星座です。そこへ肉眼で見える星団を探すもの楽しいので、ぜひ探してみてください。

 

 

方法の違う2つのやり方で図りました。まずは「力学質量」と呼ばれる、各銀河の

運動の速さを求めて、間接的に銀河団全体の質量を見積もりました。もう一つは

「光度質量」と呼ばれる方法で、銀河の星の明るさから、銀河の質量を推測しま

した。

力学質量 銀河団内の銀河の運動を調べる方法で、それぞれの銀河は、銀河団全体の質量が生み出す力(重力)によって引っ張られています。銀河の動きが速いほど、銀河を引っ張る重力は大きくなります。これはそうでなければ銀河運動の勢いのままに外へ飛んで行ってしまうと考えたからです。
光度質量 銀河団内の銀河の明るさから、質量を求める方法で、星の明るさと、質量の間には関係があり、明るいほど、質量が大きいのです。

 

本来なら、どのよう測っても、質量は同じになるべきものです。ですが結果は、

違っていました。「力学質量」の方が圧倒的に重かったのです。

 

この結果で、ツビッキーは「力学質量」を信じました。「かみのけ座銀河団」は

見た目の明るさ以上の質量を持つと考えて、かみのけ座銀河団には見えない物質が

あり、銀河団の銀河は、この見えない物質の重力のおかげで、銀河団内に留まって

いると結論づけました。

 

この「見えない物質」こそが「ダークマター」です。

 

ちなみにこの「ダークマター」という名前は1980年代になって呼ばれるように

なっています。見えない物質の存在が提唱された当初は、「ミッシングマス

(失われた質量)」と呼ばれていました。

 

(C)NASA/アンドロメダ銀河

 

銀河円盤の回転速度

 

ツビッキーが「かみのけ座銀河団」の観測をしてから40年ほどたった1970年代に

今度はアメリカの天文学者ヴェラ・ルービン(1928~)が、地球から約250万光年、

離れたところにある「アンドロメダ銀河」を観測して、奇妙な現象を発見します。

 

アンドロメダ銀河は渦巻き状の銀河で、銀河の星々や星間ガスは回転しています。

ルービンはアンドロメダ銀河のガスが回転する速度を測ってみました。

 

ガスの運動する速度は、光源が観測者に対して近づきたり、遠ざかったりするとき

に、光源の出す光の波長が変化を測定する方法でルービンは1箇所ではなく、銀河

の中心から様々な距離にあるガスの回転速度を調べました。

 

渦巻銀河は、中心に星が密集して、ひときわ明るくなっています。そのため、中心

に近いほど、重力が強いはずであると、考えられていました

 

その通りなら、渦巻銀河のガスの観点速度は中心が速く、外部は遅くなります。

ですが、結果は中心近くも、外縁部も、回転速度にはあまり違いがありませんで

した。つまり、重力の差もないということになります。

 

この結果から、光では観測できない何らかの物質が銀河の全体に分布し、重力を

補っているという考えを導きました。

 

ツビッキーがダークマターの存在を指摘した時代は、観測技術も不十分で、観測誤

差として次第に忘れられましたが、ルービンの観測結果が出たことにより、ダーク

マターの存在が再び注目されることになりました。

星雲・星団を見てみよう「アンドロメダ大銀河」
「アンドロメダ大銀河」について紹介しました。秋に見頃を迎えるアンドロメダ座、そのアンドロメダの腰紐あたりにぼんやりとした、星雲と間違えられがちですが、「アンドロメダ大銀河」です。この辺りにはいくつかの小銀河があり、局部銀河群を形成しています。

 

 

ダークマターの条件

 

ダークマターの存在が指摘され、正体がわからないまま、様々な観測が行われ、

正体を突き止めようと研究が続けられて、膨大な観測結果から次第のその正体に

近づいてきました。

 

現在までに「ダークマター」としての条件を5つあげてみます。

1 どんな物質ともほとんどぶつからない。
2 どんな種類の光(電磁波)も発しない。
3 宇宙初期にほぼ速度ゼロの冷たい物質だった。
4 宇宙における総質量が、見える物質の約5倍。
5 1~4の条件を満たすものが候補になりうる。

 

「ダークマター」は原子や他のどんな物質と、ぶつからないということは、電気を

帯びた粒子で、できていないということでもあります。また、どんな種類の望遠鏡

でも見えないので、光を発していないと考えられます。

 

ダークマターが冷たくなかったら、ダークマターが自らの重力で、近づくのは難し

く、星や銀河のゆりかごになれなかったようです。

 

 

ダークマターの候補

 

現在、多くの研究者はダークマターは観測装置をすり抜ける幽霊のような粒子で

あると考えられています。

 

幽霊粒子の代表格は「ニュートリノ」です。

ですが、当初はダークマターの謎の解明に一役買う存在になると、思われたニュー

トリノですが、質量が電子の1000万分の1以下と、非常に小さいことがわかり、

ニュートリノではダークマターの量の説明ができませんでした。

 

この他には「ニュートラリーノ」という超対称性粒子があります。

超対称性粒子とは素粒子理論の超対称性理論から存在が予言されている粒子です。

この理論によると、全ての素粒子は少しだけ性質の違うパートナーの超対称性粒子

を持ちます。光の粒子などのパートナーの超対称性粒子がニュートラリーノです。

 

さらにもう一つ、「アクシオン」という磁場の影響で光の粒子に変わる性質がある

極めて軽い粒子があります。電子の質量の1000億分の1から1兆分の1程度と考え

られています。これなら軽さを補う膨大な量が存在するとされ、ダークマターの候

補になりえます。

 

しかし、ここで問題があります。

「ニュートラリーノ」と「アクシオン」も実験では存在すら確認されていません。

当たり前といえば当たり前なのですが。。理論上の予想というを忘れてはいけま

せんね。

 

まとめ

 

宇宙の成分である正体不明のダークマターについてまとめました。

現在でも研究が進められているので、わからない点が多いですが、

宇宙の不思議に触れる楽しさが伝わればいいなと思います。

 

さらに新説なども紹介してゆきます。

 

 

 

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