猫の栄養についてお話ししても、その栄養素がどんなものかを、知らなくてはいけません。それらをまとめました。合わせてお読みください。
猫に必要な栄養素一覧
猫の体内で、作り出せる栄養素と、作られない栄養素がありまが、では必要な栄養とはどんなものか表にまとめました。
タンパク質(アミノ酸) | アルギンニン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、スレオニン、トリプロファン、バリン(タウリン) |
脂肪 | リノール酸、αーリノレン酸(アラキドン酸) |
多量ミネラル | カルシウム、リン、マグネシウム、ナトリウム、カリウム、塩素 |
微量ミネラル | 鉄、銅、亜鉛、マンガン、セレン、ヨウ素 |
脂溶性ビタミン | ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE(ビタミンK) |
水溶性ビタミン | チアミン(B21)、リボフラビン(B2)、ピリドキシン(B6)、ナイアシン(B3)、パントテン酸(B5)、コバラミン(B12)、葉酸(B9)、ビオチン(B7)、コリン |
ビタミンA
ビタミンAは目を守り、皮膚粘膜を強化します。
目や皮膚、骨、粘膜の健康維持に大きく関与しています。特に粘膜形成を正常化することで、病原体の体内侵入を防ぎ、感染症対策にもなります。
ニンジンやカボチャに含まれる、βカロテンをビタミンAに変換する酵素を、猫は持っていません。ビタミンAは脂溶性ビタミンです。
不足するとどうなる? | 粘膜が弱くなり、感染症にかかりやすくなります。皮膚障害や眼のトラブルも起こります。 |
過剰になるとどうなる? | 急性中毒症を引き起こして、嘔吐などの症状が出ます。通常の食生活では起こりません。 |
ビタミンAを含む食材は | 鷄レバー、豚レバー、牛レバー、うなぎ、銀ダラ |
ナイアシン(ビタミンB3)
ナイアシン(ビタミンB3)は猫の必須栄養素の一つです。
猫にとって、ナイアシン(ビタミンB3)は必須です。それは、体内で合成できないからです。例えば、犬はアミノ酸のトリプトファンからナイアシンを合成できる機能がありますが猫にはありません、必要量は食事からの摂取に頼るしかないのです。
不足するとどうなる? | 下痢バドの症状が出ます、またナイアシンを全く摂取しないと3週間程度で死亡した報告があります。 |
過剰になるとどうなる? | 過剰症は通常の食事では起こりません。 |
ナイアシンを含む食材は | 肉魚を食べていれば摂取できます。マグロ、カツオ、豚レバー、牛レバー、サバなど |
ミネラル
ミネラルは体内の酵素反応や骨格に必要不可欠です。
多重元素(酸素、炭素、水素、窒素)以外の生体元素で、1000kcalあたり100mg以上必要な元素を多量ミネラル(カルシウム、リン、マグネシウム、ナトリウム、カリウム、塩素)といい、必要量が1000kcalあたり100mg未満の元素を微量ミネラルといいます。これらは、骨格成分として、または細胞内外の体液に分布し、生体酵素反応のサポートを行っています。
不足するとどうなる? | 成長不良や骨粗鬆症などの原因となります。また、全ての生体反応をサポートしているので、特定の症状というよりは、全身が不調になります。 |
ビタミンAを含む食材は | しらす、コウナゴ、煮干し |
食物繊維
食物繊維はベンの状態を整えるために必要です。
食物繊維は膵臓などから分泌される消化酵素で、消化分解されない食物成分です。大腸などで腸内細菌の餌になることで、大腸内pHを酸性にし、水分吸収を促進して、便を固めたり、便の量や湿度等を増やす作用があります。
不足するとどうなる? | 便の量が少なくなったり、水分含有量が少なくなった結果、腸内通過時間が長くなったり、便の粘度に影響します。 |
過剰になるとどうなる? | 多すぎると便の量が多くなります、この時水分補給量が少ない時には便秘がちになるので、気をつけましょう。 |
ビタミンAを含む食材は | プロこっリー、カボチャ、ニンジン、とうもろこし、サツマイモ |
イソロイシン
イソロイシンはエネルギー生産の必須アミノ酸です。
イソロイシンはケト原性ならびに糖原性の必須アミノ酸の一つです。またタンパク質の原料にもなります。ケト原性アミノ酸とは、体内で脂肪酸からケトン体と転換されうるアミノ酸のことです。このケトン体が筋肉や脳で使われるエネルギー源となります。
不足するとどうなる? | 子猫では成長不良や体重減少、皮膚や被毛の異常などの原因になります。ですが、後々与えると元の戻ります。 |
ビタミンAを含む食材は | カツオ節、しらす干し、大豆、干し海苔、若鶏胸肉 |
ロイシン
ロイシンは筋肉発達のための必須アミノ酸です。
ロイシンはケト原性を持つ必須アミノ酸の一つで、タンパク質構成アミノ酸の一つでもあります。ロイシンはタンパク質の分解抑制と合成促進の調整に、関与しているので、筋肉が発達することを助け、筋肉が失われないようにする性質があります。さらに、インスリンの分泌を増加させ、肝臓のグリコーゲンからのエネルギー生産を促進します。
不足するとどうなる? | 子猫では、体重減少の原因になりますが、それ以外の特徴的な症状はありません。 |
ビタミンAを含む食材は | カツオ節、しらす干し、あまのり、大豆、チーズ |
リジン
リジンはベジタリアンに不足するアミノ酸です。
リジンはケト原性を持つ必須アミノ酸の一つで、タンパク質構成アミノ酸の一つでもあります。米や、小麦、トウモロコシなどの植物性タンパク質中の含有量が低くいので、それらを中心にした食生活の地域の方は、摂取量が少なくなります。すすんで動物性タンパク質を摂取することが、栄養学的な課題となります。また、リジンはヒドロキシリジンとなり、コラーゲン合成に関与しています。
不足するとどうなる? | 子猫では、体重減少の原因になりますが、それ以外の特徴的な症状はありません。 |
ビタミンAを含む食材は | カツオ節、大豆、しらす干し、マグロ、はも |
メチオニン
メチオニンはシステインの原料となるアミノ酸です。
メチオニンは糖原性を持つ必須アミノ酸の一つで、タンパク質構成アミノ酸の一つでもあります。分子内に硫黄(合硫アミノ酸)を含んで、別のアミノ酸であるシステインや脂質代謝に関与する、ビタミン様物質のカルニチンの生合成や、リン脂質の生成に関与します。また、システインは抗酸化物質グルタチオンや、尿中に見られる、猫フェロモンのフェリニンの前段階物質です。
不足するとどうなる? | 子猫では、体重減少の原因になり、必須アミノ酸の中で最も体重減少が激しくなります。 |
過剰になるとどうなる? | 溶血性貧血などの症状報告があります。 |
ビタミンAを含む食材は | カツオ節、しらす干し、大豆、干し海苔、マグロ |
フェニルアラニン
フェニルアラニンは神経伝達物質の原料となるアミノ酸です。
フェニルアラニン(チロシン)はケト原性を持つ必須アミノ酸の一つで、芳香族アミノ酸の一つ、そしてタンパク質構成アミノ酸の一つでもあります。フェニルアラニンは体内でチロシンからドーパへと変換され、ドーパミンやノルエピネフリンといった、神経伝達物質に変換され、精神面に影響します。さらに甲状腺ホルモンの、分泌を活性化します。
不足するとどうなる? | 子猫では体重減少や毛の変色(黒から赤茶)や、神経症状等につながることがあります。 |
ビタミンAを含む食材は | カツオ節、しらす干し、大豆、干し海苔、マグロ |
スレオニン
スレオニンは糖新生に関与する必須アミノ酸です。
スレオニンは糖原性を持つ必須アミノ酸の一つで、芳香族アミノ酸の一つ、そしてタンパク質構成アミノ酸の一つでもあります。スレオニンはピルビン酸を経て、オキザロ酢酸になり、ホスホエノールピルビン酸になって、糖新生に用いられます。分子内にあるヒドロキシエチル基は、生体内酵素等の、リン酸化や脱リン酸化反応に関与し、酸素やその他タンパク質の活性化の、コントロールに関与します。
不足するとどうなる? | 子猫では食欲低下や体重減少や体の震え、痙攣、筋肉の強張り、運動失調等の症状につながることがあります。 |
ビタミンAを含む食材は | カツオ節、しらす干し、大豆、干し海苔、鶏むね肉 |
トリプトファン
トリプトファンは睡眠に関係する必須アミノ酸です。
トリプトファンは芳香族アミノ酸に分類され、タンパク質構成アミノ酸で、糖原性 とケト原性を持つ必須アミノ酸の一つです。猫はトリプトファンからナイアシンウィ充分合成することができません。また、トリプトファンはセロトニン(体温調節や、睡眠などに関与し、生理活性アミン)やメラトニン(概白リズムに関与するホルモン)の前駆体として重要です。
不足するとどうなる? | 子猫では食欲低下や体重減少のみが認められました。 |
過剰になるとどうなる? | 0.6%濃度の特殊な精製食を42日間食べさせたところ死亡例が1匹ありました。 |
ビタミンAを含む食材は | カツオ節、しらす干し、大豆、干し海苔、チーズ |
バリン
バリンは筋肉の維持に関与する必須アミノ酸です。
バリンは側鎖にイソプロピル基を持ち、タンパク質構成アミノ酸で、糖原性を持つ必須アミノ酸の一つです。バリンはスクシニルCoAになり、TCA回路のオキサロ酢酸からホスホエノールピルビン酸を経て、グルコースに変換され、糖新生に用いられます。他のアミノ酸が肝臓で代謝されるのに対し、分枝鎖アミノ酸のバリンは、ロイシンやイソロイシン同様、筋肉で代謝されます。
不足するとどうなる? | 子猫では体重減少のみが認められました。 |
ビタミンAを含む食材は | カツオ節、しらす干し、大豆、干し海苔、チーズ |
ヒスチジン
ヒスチジンはヒスタミンになる必須アミノ酸です。
ヒスチジンは必須アミノ酸の一つで、タンパク質の原料でもあり、糖原性アミノ酸の一つですが、その他に、ヒスタミンやアンセリン、カルノシンといった、生理活性物質の前段階物質として、重要です。ヒスチジンにはイミダゾイル基という、特殊な性質を持つ部分があり、酵素活性の中心や、タンパク質分子内での、水素イオンの移動に関与しており、赤血球のヘモグロビンで、酸素の受け渡しにも関与しています。
不足するとどうなる? | 子猫では成長不良や体重減少の原因になるという報告があります。 |
ビタミンAを含む食材は | カツオ節、カツオ、マグロ、サバ、鶏胸肉 |
アルギニン
アルギニンは尿素回路に関与する必須アミノ酸です。
アルギニンは猫の必須アミノ酸の一つです。生体に有害なアンモニアを尿素に変えて、無毒化する代謝経路のことを、肝臓で行われている尿素回路、またはオルニチン回路と呼ばれています。これらをアルギニンのアルギナーゼの働きで、オルニチンと尿素に加水分解することでコントロールされています。また、α-ケトグルタル酸になり、クエン酸回路のオキサロ酢酸から糖新生経路に入る糖原性アミノ酸でもあります。
不足するとどうなる? | 嘔吐、唾液過多、下痢、体重減少、食欲減退などの症状を伴う高アンモニア血症が生じました。 |
ビタミンAを含む食材は | 鶏ササミ肉、鶏胸肉、豚ヒレ肉、豚ロース肉、マグロ |
タウリン
タウリンは猫には合成できないアミノ酸の一種です。
タウリンは、人なら含硫アミノ酸(システイン)から合成され、アミノ酸と表記されルことがありますが、カルボキシル基を持たない猫は、アミノ酸やタンパク質の原料になりません。猫はタウリンを、合成する酵素がないのです。欠乏すると中心網膜の退化や、拡張型心筋症が生じてしまうので、必須栄養素の一つです。心臓、筋肉、肝臓、腎臓、肺、脳などで消化や神経伝達に関与しています。
不足するとどうなる? | 1075年当時のキャットフードを食べるとタウリン不足からなる中心網膜の退化だと報告した例があります。この他にも心筋症の報告もあります。 |
ビタミンAを含む食材は | カキ、タコ、エビ、イワシ、サンマ |
リノール酸
リノール酸は植物だけが、作れるオメガ6脂肪酸です。
通常脂肪酸は細胞内で作られます。2個づつ炭素を繋げてゆく方式で合成され、必要に応じて「脂肪酸不飽和化酵素」により二重結合を追加され、不飽和脂肪酸になります。この酵素は二重結合にできる部位が、決まっていて、端から6番目に二重結合を入れる酵素は、植物にしかないために、リノール酸は必須なのです。
不足するとどうなる? | 皮膚の乾燥、肌ツヤがない、フケ、不妊症、脂肪肝、食欲低下、体重減少などの症状が認められます。 |
ビタミンAを含む食材は | ヒマワリ油、綿実油、コーン油、大豆油、ゴマ油 |
α-リノレン酸
α-リノレン酸は植物の恵みを活用、オメガ3脂肪酸の元です。
オメガ3脂肪酸の原料となるのがα-リノレン酸です、海の食材に多く含まれています。オメガ6脂肪酸同様、オメガ3脂肪酸も動物は体内で合成できません、植物プランクトンが合成してくれたものを食べた魚や、海藻、その他植物が原料となります。通常、α-リノレン酸からEPAやDHAが合成されますが、変換効率が低いので、EPAやDHAも摂取した方が良いとされています。
不足するとどうなる? | 皮膚の乾燥、肌ツヤがない、フケ、不妊症、脂肪肝、食欲低下、体重減少などの症状が認められます。 |
ビタミンAを含む食材は | エゴマ、なたね油、大豆油、マヨネーズ、大豆 |
アラキドン酸
アラキドン酸は猫が合成酵素が少ないので必要量が足りません。
人間はオメガ6脂肪酸のアラキドン酸を作り出せますが、猫は合成酵素の働きが不十分で、必要量を合成できません。アラキドン酸は植物性食材ではなく、動物性食材に含まれています、肉食動物の猫はそれで補ていたわけです。
不足するとどうなる? | 皮膚の乾燥、肌ツヤがない、フケ、不妊症、脂肪肝、食欲低下、体重減少などの症状が認められます。 |
ビタミンAを含む食材は | 鶏卵、サワラ、豚レバー、真サバ、ワカメ |
まとめ
🐈猫に必要な栄養素の用語についてまとめました。
猫には個体差があり、栄養に振り回されずに、その子にあった食事ということが大切です。最近の総合栄養食表示のキャットフードで充分栄養は考えられていますし、用量を守って与えることも大切です。それに猫にはある程度の調整力が備わっています。それらを踏まえて、健康的に育ててあげてください。
愛猫ちゃんの食生活の参考になれば幸いです。
大切にしてください。
このページは主に「愛猫のための症状・目的別栄養事典」須崎恭彦著/講談社 を参考にさせて頂きました。
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