(C)NASA/M100
天体の距離を測りのにはいくつかの方法があります。
実は天体の距離を決めるのには決まりごとが存在します。
同じモノサシを使わないと、距離の共有ができないからです。
大まかに、測る距離によって物差しが変わります。
今回は地球から6500万光年までの測り方について紹介します。
見かけの明るさから距離がわかる
ヒッパルコス衛星で、年周視差を利用して距離が測れる限界はおよそ300光年です。
銀河系の直径が約10万光年なので、かなり近距離の測り方であることが、わかり
ますね。
それ以降の遠距離にもいくつかの段階があります。
まずは、星の明るさを利用する方法です。
身近なところで、街灯を例にします。
街灯の種類(ワット数など)条件を同じにしたとして、近い街灯ほど明るく見え、
遠い街灯ほど暗く見えます。
つまり、「見かけの明るさ」が距離によって変わってきます。
これを利用して、距離を推定することができます。
街灯の明るさは、距離の2乗に反比例します。
距離が2倍になると、見かけの明るさは4分の1となります。
ここで、近くにある1つ目の街灯までの距離がわかっていると、その明るさを基準に
し、遠くにある街灯の見かけの明るさを比較することで、その街灯までの距離が
測れます。
このような原理で、年周視差が使えない遠くにある天体でも、距離を推定することが
できます。
天体は、その大きさや温度などで明るさの違いができます。天文学では、天体を地球
から同じ10パーセク(約32.6光年)の距離に置いた時の明るさを、
「本当の明るさ(絶対等級)」と決めています。
同じ種類の天体なら、明るく見える天体ほど近く、暗く見える天体ほど遠くなります。
本当の明るさがわかっていれば、これを基準にして距離を測ることができます。
本当の明るさを知るためにはには、距離がわかっている明るさの基準になる天体が
必要不可欠となります。
精度の高い距離の指標
本当の明るさが最もよくわかっている天体の一つが、「変光星」です。
いくつか種類のある変光星ですが、その中でも、「セファイド変光星」が精度の高い
距離の指標として、使われることが多いです。
セファイド変光星は、渦巻き銀河の円盤部分などに多く見られ、数時間から、100日
程度で、明るさを変える周期があります。
また、変光星の規則性を研究した結果、明るさの変化の周期が長いほど、見かけの明る
さが明るく、周期が短いほど暗いということがわかってきました。
同じくらいの距離同士の星を比べるなら、見かけの明るさの違いも、本当の明るさの
違いも大差がないとこもわかりました。
ということは、私たちが住む銀河系内で、割と近い場所のセファイド変光星を、
基準の星として見つける必要があります。
変光星を見つけた後は、見かけの明るさの変化の周期を調べ、本当の明るさを
求めます。そこからその銀河までの距離を推定します。
セファイド変光星は他の星に比べて明るい星なので、遠い銀河の距離推定に向いて
います。
NASAのハッブル宇宙望遠鏡は、セファイド変光星の観測から、約6500万光年までの
銀河について、30個程度の銀河の距離を求めています。
主系列星を利用する
明るさの基準となる天体として、変光星以外の天体を用いる方法もあります。
(C)march of gabriel
主系列星は、中心部で水素がヘリウムに変わる核融合反応が起きて輝く恒星です。
太陽も主系列生の一つです。
主系列星は、その明るさと色に、対応関係があることがわかっています。色が青い、
ほとんどの星の本当の明るさが明るく、赤いほど暗いのです。この関係は、発見者の
名前をとって「ヘルツシュプルング・ラッセル図」と呼ばれる図で表されています。
この主系列星の色と明るさの対応関係を利用して、その主系列星までの距離を測る
ことができます。
まず、年周視差の方法が使える近くの主系列星の距離を求めます。その星の色と、
本当の明るさの関係を求めておきます。
次に、年周視差の方法が使えない遠方にある主系列星の色と、見かけの明るさを
調べます。そして、セファイド変光星と同様に、先に求めた本当の明るさと、比較すれ
ば、その星までの距離を推定できるというものです。
主系列星は、星に含まれる金属の量によって、色と明るさの関係が少しズレてしまう
ので、セファイド変光星を利用する測定方法に比べると精度が落ちます。
さらに、主系列星は、セファイド変光星に比べると暗いので、遠くにある主系列星は、
見かけの明るさを求めることに向いていません。
その他の測り方
(C)march of gabriel
まとめ
地球から6500万光年までの距離の測り方について紹介しました。
遠くに星を測るには近くにある星を利用しますが、その基準にする星までの距離が
正確でないと誤差は大きくなります。
最近は宇宙望遠鏡などを使って、より精度の高い観測ができるようになって、
その誤差も少なくなってきています。
参考になれば幸いです。
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