(C)アストロアーツ/星空年鑑
秋の終わりから、じわじわと顔を出し始めるのが「おうし座」です。
冬がはじまるよ〜という感じです。
今となっては「おうし座」を探すときには、1等星のアルデバランの赤い星が、
目立つという方も多いのではないでしょうか。
日本にはこの「おうし座」のアルデバランよりも、その美しさで魅了していた
星があります。
正確には星団です。
そう「すばる」です。一般的には「プレアデス星団」という、いくつかの星の集まり
で、比較的若い星が、生まれたすぐの形を、今だに見せている、星団です。
私はこの「すばる」は、谷村さんのかの有名な歌のすばるなんだよ〜と教えてもらった
記憶がありますが、もちろん、それよりも遥か昔から日本では呼ばれていました。
しかも地域によって色々あるようです。
今回は「おうし座」を意味して、使っていた和名を知ってみませんか?
すばる(統星・昴)
主に使われていた地域 | 近畿・中国・四国・九州ほか |
時代や、地域によって移り変わりの流れがあるようです。
江戸時代の文献に漢名で題字に「昴」が使われています。内容は「東国で九曜の星と言
って、江戸では六連星と言った」というものです。
「すばる」と呼んでいたのは、主に関西の方で、関東で使われ出したのは、大正の頃
だったようです。
一般的には大正でも、文献に残る古くは清少納言の「枕草子」に、ご存知の方も多いの
ではないでしょうか。「星はすばる、彦星、明星。。。」と呼ばれています。
清少納言よりも60年ほど前に、歌人の源順が残した文献にも出ていて、こちらは
「宿曜の昴宿は六星」とあるので、「おうし座」のすばるを指していると考えられ、
清少納言はこの文献から「すばる」を使用したと思われます。
さて、「統星」という「すばる」は、現在ではあまり馴染みがありませんが、歌人源順
より約20年前に、神様を祀る物の中に「玉飾り」のことを、「儒波屢(スバル)の玉」と
呼んでいました。
その玉飾りを「御統(ミスマル)」と呼ぶ使い方も出てきてます。また、意味としては
「糸を使って纏めて統括する意」があるとして、星団の姿と合わせて、これらを江戸の
国学者たちが、定説へと導きました。
その後、使われ方は「昴(御統の形に似ている)星の名」としています、ですが、現在は
「昴」で「すばる」となっている方が一般的ですね。
むつらぼし(六連星)
主に使われていた地域 | 千葉・茨城・群馬・長野・静岡・青森・岩手・山形ほか |
「6個の星が連なっている」という、見たままの名前がつけられた、シンプルなもの
ですね。昔はよく見えたんでしょうね。ほんと美しかったと思います。
ちょっと羨ましいです。
今では、市街地では位置の確認できるほどの、明るさではないでしょうか。
「むつらぼし」というのは、すばるを知らない人でも、「六連星」というと、分かる
ような感じで伝わった、「オリオン座」の三つ星のようなイメージです。
この和名の記事を書かせて頂くにあたって、参考にさせてもらっている文献の著者の方
は明治のお生まれで、そのお母さんは江戸の生まれの方です、そのお母さんは「六連
星」はわかるけど、「すばる」は知らなかったそうです。
ちなみこの著者の野尻先生は惑星プルートの和名「冥王星」を提案して採用された方
だそうです。
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くようのほし(九曜の星)
主に使われていた地域 | 茨城・千葉・静岡・山形・岡山ほか |
「九曜」というのは、仏教で七曜(日・月・火星・水星・木星・金星・土星)に羅ご・
計都という実在しない2星を加えたものです。そして、天地四方を守護する仏神に
象って星曼荼羅にも描かれ、信仰の対象として、崇拝されていました。
この九曜が転じて、すばるに使われ出したのは、北斗七星が「七曜」と呼ぶように
なったことに応じてのようです。ただ、「六連星」という数から行くと、実体とは関係
が薄いようです。
もう一つ、考えられる説は、江戸の残された文献にある「東国にて、九曜の星、江戸に
て六連星という」これと似た言葉に「すばる九つ、夜七つ」というものがあって、こち
らは時間を現していますが、このあたりが混ざって伝わっているというものです。
ただ、「九曜の星」というのは地域によって、カシオペヤ座のことをさすこともある
そうで、口頭で伝わっている感じが面白いですね。
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つりがねぼし(釣鐘星)
主に使われていた地域 | 千葉・茨城・東京・静岡・長野・佐渡ほか |
こちらは「おうし座」のアルデバランを含む星でできた「V」字型を指しています。
実はこちらも星団で、「ヒアデス星団」と呼びます。
多くは「つりがね」と呼んでいるようですが、地域によって、「鐘つき星」や
「半鐘星」などバリエーションがあります。
すばるのあとぼし(後星)
主に使われていた地域 | 青森・丹波・福井・姫路ほか |
これは、「アルデバラン」の意味とも一致します。というのも、アルデバランは「後に
続くもの(従うもの)」という意味があります。「後星」という表現も「すばる」の後に
昇ることをそのまま表現していると考えられています。
このように、「すばる」を基準にして、「後星」として呼ぶのは自然の流れなのかな
と考えます。
おうし座の見つけ方
「おうし座」の見つけ方は、こちらのページをご覧ください。
ヒアデス星団の見つけ方
「ヒアデス星団」の見つけ方は、こちらのページをご覧ください。
プレアデス星団の見つけ方
「プレアデス星団」の見つけ方は、こちらのページをご覧ください。
おうし座の神話
「おうし座」のギリシャ神話は、こちらのページをご覧ください。
まとめ
おうし座の和名を紹介しました。
すばるは「昴」という漢名のままかと思いましたが、色々流れがあるようです。
「六連星」というのがシンプルに、和名に近いんですね。
先日、観察会に参加して、「プレアデス星団」を高性能の双眼鏡で見ました。
美しかったです。
一緒に参加した友人は「スワロフスキーのシャンデリア」といっていました。
ちょっと大げさではありますが、それほど美しく輝いていました。
皆さんもお近くの観察会に参加して、機会があれば見てください。
肉眼で見るよりも、やはり散開星団らしい姿が素晴らしく綺麗です。
良い観望でありますように。。。。。
コメント
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